総社市西阿曾にて、大名墓の笠(はぶ笠)の作り替え

倉敷・総社のお墓・石材専門店として、親子3代、お墓や石材に関するお仕事をさせていただております、大森石材店です。総社市西阿曾にて、大名墓の笠(はぶ笠)の作り替えをお任せいただきましたので、ご紹介いたします。

 

総社市西阿曾 個人墓地 大名墓の笠(はぶ笠)作り替え

 

「お墓が欠けてしまった」とお困りのお客様からご相談をご依頼いただきました。総社市の西阿曾という地域にある個人様の墓地で、早速確認にうかがいました。

 

こちらがご相談のお墓です。広い敷地の中央に、昭和30年ごろに建てられた、とても立派な大名墓があります。お墓の後ろは竹林になっていました。こうして見るとどこが欠けているのか分かりませんが・・・

 

お墓の笠の右後ろの角が、このように欠けてしまっていました。後ろの竹を伐採しているとき、竹が倒れてあたり、欠けてしまったそうです。お客様は、お墓のことなので修理ではなく作り替えたいとご希望でしたので、この笠だけを作り替えることになりました。

 

笠を取り外して、工場へ持ち帰りました。「はぶ笠」と呼ばれる、大名墓特有の笠です。今回は、これと全く同じものを作ることになります。

 

実際にお墓に設置するときは、この笠の上にもともとの宝珠を設置します。寸法を計測したり形状を確認したりして、用意した石の加工の準備に入ります。

 

こちらは用意した石をこれから笠の形に加工する前の段階で、笠の大きさに合わせて荒石を真四角の状態にするところです。今回ご用意した石は、香川県産の青木石です。欠けてしまったハブ笠の石と合わせるため、同じ年代の青木石を用意し、できる限り同じ石を調達しました。

 

先ほどの状態から、手加工でここまで加工を進めました。時間はかかりましたが、笠の形はほとんど出来上がりました。

 

笠の手前の部分を加工したところです。中央の丸い部分はこれから家紋を彫刻する箇所で、周りを彫り下げています。周りの白い部分は、以前は白色を入れてありましたが、今回は色は入れずにノミ仕上げとしています。石肌がそのまま見えてきれいな仕上がりです。その後、家紋の彫刻や表面の仕上げ等を行って、はぶ笠が完成しました。

 

完成したはぶ笠をお墓に設置し、工事完了です。据え付けの際は、耐震ボンドを使用しました。

 

笠の上の宝珠とお墓の棹石はそのままで、はぶ笠のみが新しく作ったものですが、違和感なく仕上がっています。今回はお客様とお話して、昭和30年ごろに建てられたお墓本体と違和感のないように表面の仕上げを行いました。現代の多くのお墓は、表面がツヤツヤした本磨きで仕上げられていますが、昭和30年頃に建てられたお墓では、それよりも少し光沢を抑えた仕上がりになっています。笠だけが本磨き仕上げになると、棹石など他の部分との違和感が大きくなってしまいますので、当時使われていた道具を使い、全体の風合いと揃えて仕上げました。

 

実は笠にあった家紋とお墓本体の家紋が微妙に違っていたので、その確認もあってお客様には工場にお越しいただいていました。そのときちょうど笠の製作をしていたので実際の加工の様子も見ていただけて、「お、できよるなあ~」と完成が待ち遠しいご様子でした。設置後の違和感のない仕上がりにも、大変喜んでいただくことができました。

今回は、大名墓の「はぶ笠」の作り替えという珍しいご相談でした。実際の製作は、三代目が担当させていただきました。三代目にとって「はぶ笠」の製作は初めてのことでしたが勉強になることも多く、完成後はお客様に喜んでいただけたことはもちろん、緻密さや丁寧さが必要な加工作業を無事に終えられた達成感もありました。こうした石材の加工ができる職人は少なくなってきていると言われていますが、これからも技術を高め続け、将来にも残していきたいと改めて感じさせていただいたお仕事でした。貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました。